2010年12月15日水曜日

Atomじゃ物足りない、それならコレでどう??――新生「VAIO Y」を攻略する

 ソニーの「VAIO Y」シリーズは、13.3型ワイド液晶ディスプレイと余裕あるサイズのキーボード/タッチパッドを搭載する、携帯性と操作性のバランスに配慮したモバイルノートPCだ。

【拡大画像や他の画像】 【表:ベンチマークテストの結果】

 特徴はインテルのCULV(Consumer Ultra Low Voltage)版CPUに連なるバリュークラスの超低電圧版 信長の野望 rmt
CPUを採用している点で、内蔵の光学ドライブも省いて価格を抑えている。

 VAIOノートのラインアップでは、画面サイズが同じ「VAIO S」シリーズの下位に位置付けられ、Atom搭載の「VAIO P」「VAIO M」「VAIO W」を除けば、最も安価に入手できるVAIOブランドのモバイルノートPCとして注目したい製品だ。

 2010年1月にVAIO初のCULVノート
シリーズとして発売された際には、ボディデザインの多くをVAIO Sと共通化しており、VAIO SのCPUをCULV版に変更して光学ドライブを外した廉価版といった印象が強かったが、6月19日に発売された2010年夏モデルではボディデザインを変更し、カラーバリエーションをそろえるとともに、内部のアーキテクチャも刷新することで、VAIO Sとの違いが明確になった。


 店頭販売向けの標準仕様モデルは「VPCY219FJ/S」の1モデルで、OSに64ビット版Windows 7 Home Premium、オフィススイートにOffice Personal 2010を採用し、量販店での実売価格は11万5000円前後となっている。さらに仕様をカスタマイズできるソニースタイル直販のVAIOオーナーメードモデルであれば、6万9800円から購入可能とNetbookに少し予算を上乗せ
するだけで手が届く。

 今回は標準仕様モデルのVPCY219FJ/Sを入手したので、早速その実力をチェックしていこう。

●デザインをリファインし、4つのカラバリを用意

 まずはボディデザインだが、2010年春モデルから、パームレスト、タッチパッド、キーボードに手が加えられた。

 パームレスト部分に隆起した別パーツをはめ
込んだ「インタラクションテーブル」をやめて、パームレストから液晶ディスプレイヒンジ周辺部までのトップカバーを一体成型とすることで、よりスッキリしたまとまりあるデザインに仕上げている。タッチパッドには細かなデザインパターンをあしらい、キーボードのカラーをブラックからホワイトに変更して“軽さ”を出すなど、全体的に従来より洗練された。 ff11 rmt


 電源ボタンとバッテリー、ACアダプタ接続用のDC入力といった電源部分を筒状にデザインしてボディの背面に集めた上で、本体トップカバーのデザイン内に溶け込ませた「ブレンドシリンダーフォルム」、ボディの先端を丸くカットしてバックへの出し入れをしやすくしたり衝撃を受けた場合に破損しにくくしたりする「コンバージェンスライン」といった
デザインの特徴は、同社の高級モバイルノートPC「VAIO Z」と共通だ。カーボンやアルミなどの高級感ある外装ではないものの、ボディ自体の作りはしっかりしている。

 ボディのカラーは明るいシルバーを基調に、側面の下部と底面をブラックで塗り分けており、コントラストを付けて見た目に薄く感じるようにしている。VAIOオーナーメードモデルでは、
ブラック、ピンク、パープルのカラーも用意され、これらを選ぶと天面と液晶ディスプレイ周囲の色が変わる。また、ブラックとパープルではキーボード/パームレスト面のカラーもブラックになるので、標準仕様モデルとはかなり違って見えるだろう。

 本体サイズは326(幅)×226.5(奥行き)×23.7?32(高さ)ミリ、重量は約1.78キロで、2010年春モデル
とまったく同じだ。重量は実測値で1.721キロと、公称値より少し軽かった。モバイルノートPCの小型化、薄型化、軽量化はソニーの得意とするところだが、バリューラインのVAIO Yでは特別にこうした追求はなされていない。モバイルを想定しつつ、液晶やキーボードのサイズに比重を置いた設計だ。国内のモバイルノートPCとしてはやや重いが、2キロは大きく下回っ
ているので、通勤や通学などで持ち運んでの利用もこなせるだろう。

 バッテリー駆動時間は6セルの標準タイプ(リチウムイオン/54ワットアワー 10.8ボルト 5000mAh)で約7時間、9セルのLバッテリー(7500mAh)で約10時間をうたう。低価格帯のモバイルノートPCとしてはなかなかのスタミナといえるが、後述するプラットフォームの変更などに伴い、公
称のバッテリー駆動時間は従来モデルより2?3時間短くなった。Lバッテリー装着時は本体の重量が約145グラム増え、後部が17ミリほど出っ張る。

 付属のACアダプタは、サイズが36(幅)×92(奥行き)×26(高さ)ミリ、電源ケーブル込みの重量が約192グラムと小型軽量だ。本体と一緒にバッグに入れて持ち運びやすいコンパクトさがうれしい。


CPUをCore 2からCore iへ世代交代

 基本スペックでは、Calpella(開発コード名)プラットフォームの採用が特徴だ。CPUをCULV版のCore 2 Duo SU9400(1.4GHz)からCore i3-330UM(1.2GHz)に、グラフィックス機能をチップセット内蔵のIntel GMA 4500MHDからCPU内蔵のIntel HD Graphicsに世代交代することで、基本スペックを底上げしている。

 CPU
のCore i3-330UMは末尾に「UM」が付いた超低電圧版のモバイル向けデュアルコアCPUだ。32ナノメートルプロセスルールで製造され、動作クロックは1.2GHz、3次キャッシュは3Mバイト、TDP(熱設計電力)は18ワットとなっている。

 ほかのCore i3と同様、Hyper-Threadingによって2コア4スレッドの同時実行が可能だが、高負荷時に動作クロックを引き上げる
Turbo Boost Technologyには対応しない。ただ、省電力機能のEIST(Enhanced Intel Speedstep Technology)は備えているので、アイドル時や低負荷時に動作クロックと電圧を下げて消費電力を抑えることが可能だ。

 CPU以外は、チップセットにIntel HM55 Express、メインメモリに4GバイトDDR3 SDRAM(2Gバイト×2/PC3-6400)、データストレージに500Gバイト
の2.5インチSerial ATA HDD(5400rpm)を採用する。コストパフォーマンス重視のモデルながら、プリインストールOSの64ビット版Windows 7 Home Premiumを生かすべく、4Gバイトのメモリを標準搭載しているのが目立つ。メーカー保証対象外の行為ながら、底面のネジ止めされたカバーを開ければ、メモリのSO-DIMMスロット2基と2.5インチHDDベイにアクセスできるの
で、メモリの交換などは容易だ。

 通信機能はIEEE802.11b/g/n(送受信最大150Mbps)の無線LAN、1000BASE-Tの有線LAN、Bluetooth 2.1+EDRを備える一方、モバイルWiMAXは標準で対応していない。

 拡張端子類に関しては、3基のUSB 2.0、4ピンのIEEE1394、アナログRGB出力、HDMI出力、ヘッドフォン、マイク、FeliCa 2.0、有効画素数31万画素の
Webカメラを備える。メモリースティック デュオ(PRO-HG対応)用、SDメモリーカード(SDHC対応)用、ExpressCard/34用のカードスロットも設けており、このクラスとしてはなかなか充実した装備だ。USBポートが左右に振り分けられており、ヘッドフォンやマイク、カードスロット類を手前側に搭載するなど、配置も使いやすい。

 なお、VAIOオーナーメ
ードモデルでは、CPUにより高速なCore i5-430UM(1.2GHz/最大1.73GHz)や低価格なCeleron U3400(1.06GHz)を選べたり、最大8Gバイトのメインメモリ(4Gバイト×2)、256Gバイト/128GバイトのSSD、640Gバイト/320GバイトのHDD(5400rpm)、英字配列キーボードの搭載が可能だ。また、プリインストールOSに64ビット版Windows 7 Ultimate/Professionalや
Windows XP Professionalダウングレード代行サービスを選択できるほか、液晶フレームへのメッセージ刻印サービスも受けられる。

※記事初出時、VAIOオーナーメードモデルのオプションに一部誤りがありました。おわびして訂正いたします(2010年7月29日14時)

●モバイルとしては余裕ある画面サイズの液晶ディスプレイ

 液晶ディスプレ
イは、画面サイズが13.3型ワイド(アスペクト比16:9)、解像度が1366×768ドットだ。LEDバックライトを採用し、液晶ディスプレイ部を薄く仕上げている。VAIOでは独自に液晶ディスプレイのグレードが定められているが、VAIO Yが採用するのはベーシックな「VAIOディスプレイ」だ。

 視認性については、画面サイズに対して解像度が高すぎないため、初
期状態でアイコンや文字がゆとりある大きさで表示される。発色は少しあっさりしているが、十分な輝度を確保しており、写真や動画をカジュアルに楽しんだり、Webコンテンツやオフィススイートの利用などでは問題なく使えるだろう。バックライト輝度は9段階に調整可能だ。

 ただ、しばらく使ってみると、不満点も出てくる。表面には低反射コートが施
されているものの、黒っぽい画面表示では照明や自分の姿が割とはっきり映り込む。また、上下方向の視野角がかなり狭い。ノートPCの液晶は少し上方向から見下ろすことが多いが、この状態では表示が白っぽくなるので、チルト角度の調整をしっかり行う必要がある。液晶ディスプレイは135度程度まで開くが、ローテーブルなどに置くとやや上から見下ろすことにな
るため、もう少し開いてほしいと感じた。

●フルピッチのアイソレーションキーボードを装備

 モバイルノートPCとしては大きめの画面サイズに合わせて、キーボードとタッチパッドのサイズにも余裕がある。キーボードはキー間隔を離して格子状パネルにはめ込んだ、VAIOおなじみのアイソレーションタイプを採用。約19ミリのキーピッチと、約2
ミリのキーストロークを確保している。

 主要キーのサイズは15×15ミリで、キー間隔は4ミリ程度空いている。カーソルキー周辺に変則的なキーピッチやレイアウトが一部見られるが、EnterやBackspaceは非常に大きく、スペースバーもパームレストも十分なサイズがあり、総じて打ちやすい。最上段のキーは小さい(14×10ミリ)ものの、Esc、F1?F4、F5?F8、
F9?F12、NmLk?Deleteの間は少し離れていて、ブロック分けしているのでタイプミスは発送しにくい。

 キーストロークは浅く、タッチは軽めながら、適度な反発があり、押した際に底を突く感覚もあるので、打ち心地は悪くない。キーを強めに押すと、キーボードユニットが少したわむが、意識しなければ分からない程度だ。ただ、入力時にはパタパタ、カチ
ャカチャと少し音が鳴るので、静粛な場所では少し気になるかもしれない。

 キーボードの左上には2つのワンタッチボタンが並ぶ。VAIOボタンを押すと独自のコンテンツ再生ソフト「Media Gallery」が起動し、ASSISTボタンを押すと独自のトラブルシューティング?サポートソフト「VAIO Care」が立ち上がる仕組みだ。FキーはFnキーとの同時押しで消音、音量
の上げ下げ、輝度、ディスプレイ出力切り替え、拡大/縮小、スリープといった機能が働く。

 細かいパターンが施されたタッチパッドは、サイズが76×44ミリと十分な広さがあり、指の滑りがよい。左右のクリックボタンは前面の傾斜に合わせて配置されており、浅めのストロークで軽い力で押せるため、長時間使っていても指が疲れにくいと感じた。


 タッチパッドにはシナプティクス製のドライバ(V7.4)が導入されており、2本指の開閉で拡大/縮小を行う「つまみズーム」や、2本指ではじく動作による進む/戻るといったマルチタッチジェスチャーをサポートしている。モバイルノートPCとしてはタッチパッドのサイズが広めなので、2本指を使った操作も苦労せず行えた。

●プラットフォーム
変更でパフォーマンスはどうなったか?

 ここからは各種ベンチマークテストでVPCY219FJ/Sのパフォーマンスをチェックしていこう。Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは右に示した通りだ。CPU内蔵のグラフィックス機能であるIntel HD Graphicsを使っているだけに、グラフィックスのサブスコアは3.8にとどまったが、そのほかは4.2?5.9となって
おり、Windows 7の基本機能を難なく利用できるレベルにある。

 PCMark05は一部のテストが64ビットに対応していない(64ビット版のWindows 7には、32ビット版のWindows Media Encoder 9がインストールできない)ため、総合スコアが出ていないが、だいたいスペックから予想される通りの結果が出ている。PCMark05は古いテストでシングルスレッドでのプ
ログラムが多いため、動作クロックが1.2GHzと低めのCore i3-330UMではあまり高い結果が望めない。一方、世代が新しいPCMark Vantageはマルチスレッドに最適化されたテストを含んでおり、総合スコアが伸びている。

 Windowsエクスペリエンスインデックスでは振るわなかったグラフィックス性能についてだが、チップセット内蔵のIntel GMA 4500MHDを使っ
ていた従来機よりグッと底上げされている。DirectX 9.0世代の3D描画性能を見る3DMark06は低調な結果でゲームマシンとして使うのは困難だが、DirectX 8.1世代のゲームテストであるFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアはLow設定で5000を超えており、この程度のオンラインゲームであれば、そこそこ楽しめるだろう。

●バッテリー駆動時間は健闘、発
熱の処理も優秀

 バッテリー駆動時間のテストは、BBench 1.01(海人氏作)を実行した。BBenchの設定は「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」だ。インターネットには無線LAN(11g)で常時接続し、Windows 7の電源プランは「バランス」(ディスプレイ輝度設定は40%)とした。

 3回計測した平均は6時間24分
と、公称のバッテリー駆動時間である7時間にかなり近い良好な結果が得られた。電源プランを省電力に設定し、バックライト輝度をさらに下げるなどの工夫をすれば、もう少し駆動時間を延長することも可能だろう。さらに重量と厚さが増すのを条件に、公称10時間駆動のLバッテリーも選択できるため、たいていの利用シーンにおいてスタミナ不足で困ることはなさそ
うだ。

 利用時の快適さにつながる動作時の騒音と表面温度も測定した。まずは動作音のテストだが、使用時におけるユーザーの耳の位置を想定し、騒音計のマイクはボディ中央から約30センチ離し、設置面から約50センチの高さに固定した。室温は約26.5度、環境騒音は約28デシベル(A)で、周囲の雑音がほとんど聞こえない静かな環境で計測した。計測は
、Windows 7の起動から30分間アイドルで放置した状態と、Webページを30分間巡回し続けた状態(60秒に1回ページ切り替え)、そしてシステムに高い負荷がかかる3DMark06を30分間実行し続けた状態の3パターンで行っている。

 テスト結果はアイドル時で31.5デシベル、Webブラウズ時で33デシベル、3DMark06実行後で39.5デシベルと、負荷に応じて騒音レ
ベルが上昇した。アイドル時や低負荷時でもファンは低速回転し、低い風切り音が鳴るが、エアコンなどの家電が動作している部屋では気にならない程度だ。さすがに高負荷の状態が続くとファンは高速回転し、風切り音は大きくなるが、耳障りな高音や異音を発することはなかった。

 表面温度のテストについては、本体を樹脂製のデスクに設置し、ボディ
各部で最も高温になるポイントを放射温度計で計測した。計測したのは、Windows 7の起動から30分間アイドル状態で放置した場合と、そこからシステムに高い負荷がかかる3DMark06を30分間実行し続けた場合の2パターンで、室温は約26.5度だ。

 こちらのテストは良好な結果が得られた。アイドル時の表面温度はパームレストが29?30度程度とクールで、キー
ボードやタッチパッドといった操作時に手で触れる部分の温度は抑えられていた。最も高温になったのは底面の排気口付近だったが、それでも36.2度と少し温かい程度だ。高負荷時では全体的に温度が上がっているものの、常時手で触れるパームレストはほとんど温度が上がらず、ホームポジションに置いた右手に少し熱を感じるだけだった。底面の排気口付近こそ40度
を超えたが、利用時に不快な熱を発することはなかった。低負荷時でもファンが回転するぶん、放熱はしっかり行われている印象だ。

●トータルバランスのよい低価格モバイルノート

 登場当初はNetbookとモバイルノートPCの間を埋める新しい製品カテゴリーとなり、Netbookに続くトレンドを生むことが期待されていたCULVノートだが、それほど盛
り上がっていないのが現状だ。これには、低価格ノートPCを求める層へ先にNetbookが十分行き渡っていた点、国内メーカーのCULVノートが海外メーカーの競合機種に対して価格面での優位性を示せなかった点などの理由が考えられるが、確かに製品カテゴリー全体としてはどこか中途半端さがあるのは否めない。

 とはいえ、個々の製品にフォーカスして見
ていくと、買い得感が高いと思えるものもある。その1つがこのVAIO Yだろう。廉価版のイメージがあった初代モデルからデザインを洗練させることで、上位シリーズのVAIO Sと違うビジュアルになったことに加えて、プラットフォームの世代交代に伴い、総合的なパフォーマンスが高まり、直販モデルではより高速なCPUやGPUを搭載できるようになったのは見逃せない


 今回のレビューでは細かな不満も述べたが、モバイルできるサイズかつ作り込まれたボディに、ゆとりがある画面サイズとキーボードを搭載し、価格も控えめというところで、なかなかオイシイところを突いている。Netbookを超えたパフォーマンスと使い勝手が備わったモバイルノートPCを低予算で入手したいなら、トータルバランスがよい1台としてお
すすめ度は高い。【前橋豪(撮影:矢野渉),ITmedia】


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引用元:エミルクロニクル(Econline) 総合サイト

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